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商標登録はしたほうがいい?【活用事例もご紹介】

先日、「銀座ママ」「銀座のママ」が商標登録されているというニュースがありました。
当たり前に使う言葉のような気がしますが、今後は気をつけて使わないといけなくなりますね。

でも商標登録ってしたほうがいいのか、しなくてもいいものか、悩みますよね。
本日はこの商標登録について中小企業診断士の立場からご説明しようと思います。

目次

結論

商標登録は費用が掛かりますが、自社のブランド力を高めるためにはとても有効です。
認知が高まればライセンス契約などで使用料や実施料(ロイヤリティ)を受け取ることも可能です。
何より自社ブランドを意識することは生産から販売までのサプライチェーンを意識した経営計画を立てる事にもつながり、社員の皆さんの意識も変わるでしょう。
商標登録を上手に活用して戦略的に収益力UPを目指しましょう!

では、そもそも商標のことがよくわかっていないという方の為に説明したいと思います。

商標とは?

商標とは以下の2つを満たものになります。

①事業者が使用するマーク
②自己の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別する為に使用するマーク

商標権=「マーク」+「使用する商品・サービス」のセットで登録されます。

主なメリットは
①商標権を取得することで、自分の商標として使い続けることが出来ます。
②自分の登録商標もしくはそれと似たような商標を使っている人に「使うな!」と言えます。
⇒つまり指定商品・指定役務(サービス)について独占出来ると言う事です。

参考:特許庁

商標権を取るにはいくらかかるの?

商標権を取るにはお金が掛ります。

①商標登録出願時
3,400円+(8,600円×区分数)
②登録料の納付時(10年分一括納付)
32,900円×区分数

区分が1つなら合計44,900円です。基本は10年一括ですが、5年一括納付(17,200円)も選べます。ただし割高になりますので10年一括で納付した方が良いです。
※2022年4月から値上げされます。値上げ後の金額を記載しています。

書面で提出した場合は、電子化手数料として1,200円+(700円×書面のページ数)が必要となります。

ちなみに区分数って何かお分かりでしょうか?
これは特許庁によってあらかじめ決められている商品・サービスのカテゴリの事です。1~45類まであります。
登録したい商品やサービスがいくつの区分にまたがっているかをカウントして出します。

まずは先行商標調査をしましょう

商標登録を申請する前に、他人が既に商標登録していないかをチェックしましょう。
既に商標登録している場合は、登録出来ませんし、無断で使うと商標権の侵害となる可能性もありますよ。

登録しているかどうかは「J-PlatPat特許情報プラットフォーム」で検索できます。

登録までにどのくらいの期間がかかるの?

出願から最初の審査結果の通知まで約12ヶ月かかります。

ちなみに商標登録は出願公開という制度があります。これは出願から2~3週間程度経過後、出願内容が一般的に公開されます。

登録が出来ない商標があります

出願すると、なんでも商標登録できるかというとそうではありません。
特許庁では、出願された商標が登録できるか出来ないかを、商標法に従って審査しています。
以下に該当する商標は、登録を受けることができませんので注意してください。

✔自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
✔公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
✔他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの
※商標法では、他人のために提供するサービスのことを「役務」(えきむ)といいます。
※「標章」とは「マーク」そのものをいいます。

1つずつ説明していきますね。

自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの

商品又は役務の普通名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第1号)

商品又は役務の「普通名称」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標のことをいいます。つまり普段から普通に使っている一般名称のことです。略称や俗称も含みます。

例えば、指定商品「アルミニウム」に使用する商標として「アルミニウム」または「アルミ」を出願した場合、「アルミニウム」は一般的な名称になりますよね。これを商標登録出来てしまうと、アルミニウムをなんと呼べば良いのでしょう?ってなっちゃいます。なのでこれは認められないのです。

商品・役務について慣用されている商標(商標法第3条第1項第2号)

「慣用されている商標」とは、もともとは他人の商品(役務)と区別することができる商標であったものが、同種類の商品又は役務について、同業者間で普通に使用されるようになったため、もはや自己の商品又は役務と他人の商品又は役務とを区別することができなくなった商標のことをいいます。

例えば、商品「自動車の部品、付属品」について、商標「純正」、「純正部品」は登録出来ません。混乱しますよね?

単に商品の産地、販売地、品質等又は役務の提供の場所、質等のみを表示する商標(商標法第3条第1項第3号)

商品の産地、販売地、品質や、役務の提供の場所、質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標のことをいいます。

例えば、指定商品「シャツ」に使用する商標として「特別仕立」を出願した場合は登録出来ません。これは単に製法を表しているだけだからです。

ありふれた氏又は名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第4号)

「ありふれた氏又は名称」とは、原則として、同種の氏又は名称が多数存在するものをいいます。また、「ありふれた氏」に「株式会社」「商店」などを結合したものは「ありふれた名称」に含まれます。

例えば、「日本」、「東京」、「鈴木」「佐藤商店」等は登録できません。ただの名前なのでダメということです。

極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(商標法第3条第1項第5号)

「極めて簡単」な標章とは、その構成が極めて簡単なもの、「ありふれた」標章とは、当該標章が一般的に使用されているものをいいます。

例えば、仮名文字の1字、数字、ありふれた輪郭(○、△、□等)、ローマ字(AからZ)の1字又は2字などが該当します。これも皆さんが普通に使いますからダメですね。

その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標(商標法第3条第1項第6号)

例えば地模様(例えば、模様的なものの連続反復)のみからなるもの、標語(キャッチフレーズ)、現元号などです。これらを登録してもなんのことかわかりませんよね。

例外もあります。

ただし、上記iii)からv)までに該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、登録を受けることができます(商標法第3条第2項)。

例えば、「トヨタ」というのは名字なので本来は登録出来ませんが、皆さん「トヨタ」って何の会社かわかりますよね?このように全国レベルで識別できる周知されている事を著名性と言います。この場合は登録が出来るんです。

公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの

公益的に使用されている標識と紛らわしい商標や需要者の利益を害するおそれのある商標は登録を受けることができません。

国旗、菊花紋章、勲章又は外国の国旗と同一又は類似の商標(商標法第4条第1項第1号)

国旗とかはダメなんですね。

外国、国際機関の紋章、標章等であって経済産業大臣が指定するもの、白地赤十字の標章又は赤十字の名称と同一又は類似の商標等(商標法第4条第1項第2号、第3号、第4号及び第5号)

国、地方公共団体等を表示する著名な標章と同一又は類似の商標(商標法第4条第1項第6号)

公の秩序、善良な風俗を害するおそれがある商標(商標法第4条第1項第7号)

商標自体がきょう激、卑わい、差別的なもの、他人に不快な印象を与えるようなもののほか、他の法律によって使用が禁止されている商標、国際信義に反する商標など、公序良俗を害するおそれがあるものは本号に該当します。

商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれのある商標(商標法第4条第1項第16号)

例えば、指定商品「ビール」に使用する商標として「○○ウイスキー」を出願した場合は登録出来ません。
ややこしいですよね、間違えてしまうと思います。

その他

博覧会の賞(商標法第4条第1項第9号)と同一又は類似の商標、商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標(同第18号)も登録を受けることができません。

他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

他人の使用する商標、他人の氏名・名称等と紛らわしい商標は登録を受けることはできません。

他人の氏名、名称又は著名な芸名、略称等を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)(商標法第4条第1項第8号)

ここでいう「他人」とは、現存する自然人及び法人(外国人を含む。)を指します。
例えば、国家元首の写真やイラスト、著名な芸能人、スポーツ選手等です。

他人の周知商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品・役務に使用するもの(商標法第4条第1項第10号)

「周知商標」とは、最終消費者まで広く認識されている商標だけでなく、取引者の間に広く認識されているものも含まれます。また、全国的に認識されている商標だけでなく、ある一地方で広く認識されている商標をも含みます。先ほど説明したように全国レベルで周知されているものは著名性といいますが、周知性はもう少し狭い範囲で良くなります。すでに良く知られているものはダメなんですね。

他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、指定商品・役務と同一又は類似のもの(商標法第4条第1項第11号)

商標登録は先願主義と言って先に出願した人が優先されます。すでに同じものを出願している人がいると出願できません。

他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標(商標法第4条第1項第15号)

例えば、他人の著名な商標と同一又は類似の商標を、当該他人が扱う商品(役務)とは非類似の商品(役務)に使用した場合に、その商品(役務)が著名な商標の所有者、あるいはその所有者と経済的・組織的に何らかの関係がある者によって製造・販売(役務の提供)されたかのような印象を与えるときなどがこれに該当します。

どういうことかというと、ぺこちゃんのマーク「お菓子」で登録されていますが、これを似たようなマークで「毛布」で登録は出来ないと言うことです。ぺこちゃんのお菓子は著名性がありますので、ペコちゃんに似たマークの毛布が売っていたら、関連性があると勘違いしてしまいますよね。

他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用する商標(商標法第4条第1項第19号)

例えば、

イ)外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていない事情を利用して、商標を買い取らせるために先取り的な出願をする場合
ロ)外国の権利者の国内参入を阻止したり国内代理店契約を強制したりする目的で出願する場合
ハ)日本国内で全国的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではないが、出所表示機能を希釈化させたり、その信用や名声等を毀損させる目的で出願する場合
などが該当します。

その他

他人の登録防護標章(商標法第4条第1項第12号)と同一の商標、種苗法で登録された品種の名称(同第14号)と同一又は類似の商標、真正な産地を表示しないぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示を含む商標(同第17号)も、登録を受けることができません。

ただし、上記に該当する中で、出願時において該当し、かつ、登録(査定)時においても該当するものでなければ拒絶にならない場合があります。(同法第4条第3項)。詳しくは特許庁に確認してみましょう。

商標登録の活用事例をご紹介します

商標登録を効果的に活用している事例を簡単に紹介したいと思います。

株式会社 ぬちまーす

こちらはミネラル豊富な塩を製造販売している会社です。

元々は「食塩」のみ登録していましたが、ぬちまーすを原材料に使用した商品を開発し

ぬちまーすブランドとして販売したいという依頼が増えたため、菓子や化粧品、石鹸なども登録し、
商標使用許諾を無料にしライセンス商品を広めたため、ぬちまーすブランドの認知度が向上しました。
今後はブランドを守るためにロイヤリティをいただく方針にするそうです。

株式会社クロダ

この会社は手袋製造メーカーでです。OEM製造を中心に行ってきましたが、今後のリスクを考えて、オリジナル商品を作るために自社ブランドを立ち上げました。商標登録を、独自技術を表すブランドとして活用しており自社ブランドのみならず、OEM製造の商品にも使っています。

自社ブランドを製造するようになったことで、販売までを見据えた商品開発を行うようになったようで、自社ブランド製品の割合が増えているそうです。

参考:事例から学ぶ商標活用ガイド

まとめ

商標登録は費用が掛かりますが、自社のブランド力を高めるためにはとても有効です。
認知が高まればライセンス契約などで使用料を享受することもできます。
上手に活用して収益力UPを目指しましょう!

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